迷惑メールの処理にかかる時間

という記事が出ていた。対象はインターネット利用歴3年以上のユーザ1,100人ということなので、パソコンを使い始めたばかり、という人のデータではないようだ。
1 日平均 7.78 分という時間自体も驚きだが(うちでは POPFile のおかげでほとんど時間をとられていない。メールの受信もバックグラウンドで行われているので、それに時間が取られることもないし、ここのところの精度は 99.38% で、ほとんど分類ミスもない)、それ以上に驚かされるのは、メールに書かれている URL にアクセスしてしまったり、メールに返信してしまったりするという人があわせて 25% 以上(だから 4 人に 1 人以上か)もいるということだ。
これらの原因は、いわゆる迷惑メール防止法なのかもしれない。この法律では、受信者が拒否の通知を行った場合は再送信してはいけないということが定められているが、同じ業者から再送信されなくても、「反応があったメールアドレスの名簿」として別の業者に売られてしまったらまたそこからメールが届くことになる。だから拒否の通知にはほとんど効果がないのだ。だいたい、「未承諾広告※」を件名につけるということすらほとんど守られていないという現実を考えれば、拒否の通知をしたところで効果がないのは明らかで、かえって逆効果にしかならない。
4 人に 1 人がこんな間違った行動をとってしまう(しかも、まったくの初心者というわけでもない、3 年以上インターネットを使っている人で、だ)というのは、正しい対策についての知識が浸透していないということだ。法律を作ることも大事だろうけど、誰にでもわかりやすいよう対策方法を周知することも重要だ。
spam 関係の調査といえば、POPFile の開発リーダーの John が行った調査もあった。こちらは、電子メールの利用歴が 10 年より長い人が 42%、6 年から 10 年が 50% ということなので、上記のシマンテックの調査よりも、ベテランユーザが多いと考えられる。spam の処理に時間は平均 9 分で、この結果は上記の 7.78 分と近いが、若干長い。これは、受け取っている spam の量が違うというのが原因かな。
この調査で驚いたのは、85% の人がなんらかの spam 対策ツールを使っているということだ。日本ではそんなに普及しているとは思えないし、この調査自体が spam についての調査だということを差し引いても、これは高い数字だ。欧米(主にアメリカか)では結構使われているということか。
実は私もこの調査に参加したのだけど、この調査の中で、メールの差出人と件名のリストから、spam とそれ以外のメールを振り分けてください、というものがあった。実際に John が受信した 260 通のメールを John になりきって手動で振り分けを行っていくというなかなか大変な作業だったのだけど、調査結果によれば、「人間の手作業による振り分け」の精度の平均は 99.46% だったとのことだ。うちの POPFile は上に書いたように 99.38% という精度で分類を行ってくれているので、差出人と件名だけの情報から「人間が」分類を行った場合とほとんど変わらない精度だということになる。さらに、人間の振り分けの場合は、差出人や件名を確認するのに時間がかかるわけだから、やはり効果は大きい(精度については、「他人になりきって」分類を行わなければならないという部分が若干影響した可能性はある。また、実際に人間が分類を行うときには、件名と差出人だけで判断できない場合には本文を確認することができるから、そこまで考慮すれば精度は限りなく 100% に近づくだろうけど)。
しかしこの調査でいちばん目を引くところは、1% の人が spam 送信者からなんらかのものを買ってしまっている(いた)ということだ。1% というと低いようにも感じられるが、spam が送信される量(同調査によれば、全メールのうち 77% が spam だ)を考えればこれは高いだろう。この 1% の人がどんな spam にも反応するというわけではないだろうが、それでも、spam の送信にかかるコストを考えれば十分なはずだ。実際、spam 送信者が spam を大量に送る理由は、それが儲かるからだ。反応する人がいなければ、商売にならない。だから、みんながみんな spam を無視するようになれば、自然と spam は減るはずなのだ(なくなる、ということはないのだろうけど)。こうしたことも、上記の対策方法とあわせてもっと知らせるべきなのではないのかな。